SPECIAL
2022.06.23
四国の徳島県三好市内に工場を構えて50年という「三好敷物(MIYOSHI RUG)」。「フッキング」という製法で一点一点作られたラグマットがSNSなどを通じて話題を呼んでいる。まるでアート作品のようなラグを手がけているのは20代、30代の若者たちだという。歴史ある工場と若い感性が出会い、紡がれはじめたストーリーを追う。
「昔は何十社も織物やカーペットの工場があったそうなんですよ」と語るのは三好敷物で働く市川さん。「大阪あたりの会社が工場を構えていたり職人さんも多かったようです」。しかし職人の高齢化などにより撤退する工場が後を立たず、現在では徳島県内にわずか3軒残るのみとなった。
「三好敷物」も後継者不在で工場を畳む予定だった。「もともと三好敷物と取引関係にあって、こちらを閉じてしまうとなると仕事をお願いできる場所がなくなってしまう。困るな、と」(市川)。そこで、前オーナーと相談して工場を引き継ぐことになったのだという。
「まずは私と妻が三好に移住しました。1年半くらい前ですね」(市川)。その当時、工場で働くのは市川家二人のみだったというが「ここで働きたい」という人材が現れはじめる。前オーナー時代に活躍していた職人たちの持つ技術を引き継いでいきたいとの考えから、社員を増やすという選択に至ったという。
現在の従業員数は8名で、半数は20代と若い世代。入社の経緯は様々だが大半のメンバーがSNSで「三好敷物」のラグを目にし、自発的に入社を希望したという。「一番最初にコンタクトを取ってきた男の子は『お給料はいらないので働かせてください』と言っていて。それほどの気持ちで来てくれることが嬉しかったですね。彼は今もとても頑張ってくれています」(市川)。
「三好敷物」のコンセプトは「アートやファッションを通じて伝統工芸を守る」。とりどりの色を自由に組み合わせたデザイン、絵画と見紛うようなデザイン…… 自由自在なデザインを可能にするのは「ハンドフッキング(タフティング)」という製法だ。
まず基布(きふ)というラグのベースとなる布にデザインを墨書きする。柄に沿って糸を打ち込んでいくが、この時使用するのが「タフティングガン」という工具だ。一点一点すべて手作業で打ち込み、柄が出来上がったら糸の長さを切り揃えるがこちらも手作業。手間はかかるが人の手でしか叶わない緻密な仕上がりが持ち味で、クオリティの高さからアパレルメーカーやアーティスト、商業施設から声がかかることも多く、オリジナル商品はもちろんコラボレーションも多数手掛けている。
伝統工芸を守り、次世代へ繋ぐ。「三好敷物」の“想い”の担い手の中心となっているのは、発想力と発信力に長けた20代のメンバーたちだ。彼らのクリエイティブがフックとなり、世代や地域を問わず拡がりを見せる「三好敷物」のラグマット。次回は職人としての道を歩きはじめた彼らのインタビューをお届けする。
MIYOSHI RUGー三好敷物ー
Website: https://miyoshirug.com/information/
Instagram:https://www.instagram.com/miyoshirug/
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>>タフティングマットは新境地へ 「三好敷物(MIYOSHI RUG)」の伝統工芸×アート Part.2