SPECIAL
2020.12.17
森林率86%の徳島県三好市。この街で暮らしていると、すぐそばに樹木がある環境が豊かであることをつい忘れてしまう。小さい頃遊んだ木、散歩や通学、仕事へ行く途中に見かける木。自身が大切にしている木など、忘れられない“あなたの好きな木”を三好市在住の方に紹介してもらい、その木にハグしてもらう写真とコラムを特集「86ハグ」として紹介していきます。
朝9時過ぎ頃、イケダ湖で待ち合わせたのは、特集『86ハグ』シリーズの記念すべき第1話をお願いした、藤阪樹里さん。三好市で生まれ、製材所で育った彼女に教えてもらった三好市の好きな木は、ここイケダ湖の水辺にある大きな木だった。
藤阪さんは、オーガニックコスメ、フラワーエッセンスによるセルフケアの普及活動に従事され、セラピストや看護師への研修、お母さんや働く女性の為のセルフケアワークショップなど、より深い癒しのあるライフスタイルの提案をし続けている。
現在は、東京や海外での生活を経て、2019年より生まれ故郷である徳島県三好市に拠点を移した。
「この木はなんだか異色で。他にはない存在感があるように思うんです。見守られてるような…」。木のそばに立ってもらい、お話しを聞こうとすると、少し触れるのを躊躇していた。この木は尊ぶような、敬いの対象なのだという。
東京や海外での生活経験があり、自身の育ったこの大自然とは真逆の都会で仕事と子育てをされてきたが、あるとき「より自然の中で暮らそう」という意識に少しずつ変わってきたと話す。移り住む候補は他にもあったのだが、どこも住みたいという気持ちまでにはならなかった。
しかし唯一、生まれ育ったこの三好市が、郷愁にかられたものではなく、頭も身体もフィットした。
実際、暮らしはじめると、自然のエネルギーに日々圧倒される。都会の忙しい街中の木がかわいそうに思えるほど、このまちの木は豊かだと感じるようになる。
普段からイケダ湖へはよく訪れるそうで、水辺を散策し、湖畔をぼんやり眺めることであたまの中がすっきりとクリアになるそうだ。そのうちに、イケダ湖で過ごすことはライフワークのようになっていった。この木が放っていた存在感に気づくのは、それほど時間はかからなかったのだろう。
「女性は花といわれるように、木の存在感はどこか男性のように思います」
と藤阪さんは語る。藤阪さんの名前は「樹の里」書くが、これは父親が名付けたのだという。いずれは故郷へ戻り地域をリードする人になれ、と由来を昔聞いたそうだが、敬う対象であるこの木はもしかして父親なのかなあと想像してしまう。
ハグした人:藤阪樹里
木:イケダ湖の木
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特集「86ハグ」
森林率86%の三好市で暮らしていると、すぐそばに樹木がある環境が豊かであることをつい忘れてしまう。小さい頃遊んだ木、散歩や通学、仕事へ行く途中に見かける木。自身が大切にしている木など、忘れられない“あなたの好きな木”を紹介してもらい、その木にハグしてもらう365日の写真とコラム。
vol.2へつづく。 (取材・文/横山道雄)